2018年4月26日 / 村上 要
生活、家族の記憶とファッションが繋がる国の時計
※この記事は、ペーパー版「ミッシェル・エルブランジャーナル vol.3」の巻頭で掲載された記事です。

今さら言うまでもないかもしれないが、フランス、特にパリにおけるファッションの力は絶大だ。
コレクション取材をするようになって10年くらいになるが、ファッション・ウィークを訪れるたびに、その力の大きさを実感する。
ホテルにチェックインすればフロントのスタッフは「今回もまた、始まるのね」とあいさつしてくれるし、タクシーに乗れば運転手は自身のこだわりや独自のファッション論を片言の英語で話そうとする。

ファッション・ウィークの最前線では最近、ストリート出身の若者たちが“ラグジュアリー・ストリート”、こだわりを詰め込んだストリートスタイルをひっさげ、ランウェイの世界に殴り込んできた。
ほんの数年前まで、ストリートブランドはハイファッションになんか目もくれず、ファッション・ウィークとは無縁の世界で存在感を増してきた。
ところが今は、ストリートブランドでさえファッション・ウィークの力を信じ、参加することでともに進化を遂げようとしている。
やはりフランスにおけるファッションの力は、偉大だ。

フランスでファッションの力が絶大なのは、やはり歴史が違うからだろう。
パリブランドのデザイナーに話を聞くと、彼らは常に、メゾンと自身、もしくはメゾンと家族の思い出を語りはじめ、ファッションがいかに、古くから生活に密着していたかを教えてくれる。
現代的な装いについては、古くはマドレーヌ・ヴィオネ(1876~1975)やココ・シャネル(1883~1971)が女性をコルセットから解放したように、フランスではベル・エポックのころからファッションは生活に密着しており、“マカロンカラー”など生活に根差したファッション用語も数多い。
生活に根差し、先祖代々愛され、脈々と受け継がれることで歴史を重ねてきた文化の力は、絶大だ。
「ファッション」と聞けば自身の暮らしを回顧し、家族との記憶がよみがえる――。
誰もがパーソナルな記憶とリンクできるからこそ、フランスではファッションが愛され、結果、長きにわたり世界をけん引してきたのだろう。

その意味において、フランス生まれの「ミッシェル・エルブラン」が、ファッションにおいて優れているのは、当然のことだ。
船に着想源を得た時計は世の中にあふれているが、“ニューポート”のように独特の色使いでモダンスポーティーからタイムレスエレガントまでを1つのシリーズで表現できているものは数少ない。
そして、色も長さも素材もさまざまのストラップを着替える時計の“アンタレス”は、ファッションの国だからこそ生まれる独特の時計。
新作ストラップは、まるでファッションブランドの新コレクションだ。

プロフィール

村上 要/「WWDジャパン」編集長代理
1977年生まれ。
静岡新聞社記者を経て、NY州立ファッション工科大学に留学。その後、現地の出版社でファッション・エディターのキャリアをスタートする。
帰国後、日本唯一のファッション週刊紙「WWDジャパン」記者になり、現在に至る。
WWDジャパン
日本唯一のファッション週刊紙として、ユニクロやしまむらから、「エルメス」「ルイ・ヴィトン」までを取材。
時計についてもバーゼルやS.I.H.Hを取材し、独自のファッションの視点から注目の時計やトレンド、ビジネス動向などをレポートする。