MHJ Online

2017年9月25日 / 文筆家・時計ジャーナリスト 白州太朗
それだけでヨーロピアンな雰囲気を醸し出す、トレンドの黒い時計をあえて選ぶ
突然だが、日本のイメージというと何色だろう?  日の丸の白、赤、はたまたサムライブルーといったところか。では、ヨーロッパ、フランスのイメージカラーは? 改めて問われると答えにとまどうが、筆者の体験上それは圧倒的に“黒”である。シャンゼリゼ通りを歩き、ラ・ファイエットを覗いてみれば、一見すると制服のように黒でコーディネイトをしたパリジャンやパリジェンヌたちに出逢える。
彼らは洋服を着る文化が長いからなのか、黒という本質的な色で個性を表現するのがとても上手だ。コットンパンツにも、あえて番手が少し高い糸を用いたシャツを合わせてニュアンスを出したり、深い黒色とスミ黒くらい薄めの色とでトーン・オン・トーンにまとめたりといったテクニックを、みんなが日常のなかで行なっている。
日本では、というと黒を用いたコーディネイトはガチガチのモード系か礼服、はたまた大学生が着るリクルートスーツあたりが主たる印象だ。(ともすると威圧的なカラーである黒を、就職活動中の若者が着る違和感には特に企業人たちは疑問を持たないようだがなぜなのだろう)
黒は、個性を表現するというよりは、集団のなかで目立たないよいにしたり、何か横一線な印象を持たせたりするために選ばれることが、日本においては多いと言えるかもしれない。
"就職活動時期になると、日本は黒く染まる気がする…"
だからこそ、である。いま、日常のスタイルに“気の利いた黒”を取り入れれば途端に洗練された印象を醸し出せる。ただし、気にしたこともないシャツ生地の番手にこだわることはややハードルが高いので、小物である腕時計くらいからはじめてみるのをオススメする。
今年ならば、断然ニューポートのブラックだ。本機は、ミッシェル・エルブランの旗艦コレクションで客船の窓をデザインソースに持つ。バーゼルワールド2017にて、細部のリニューアルを果たし新たに加えられたのがこのブラックである。
"筆者はネイビージャケット&シャツへニューポートをイン。引き締まった印象かつ、色気を醸し出せる"
ブラックといっても真っ黒なのはケースだけで、スレートグレーの文字盤にシルバーのインダイアルでニュアンスを出しているのは、何ともフランスブランドらしいワザ。ツヤ消しでマットに仕上げられたレザーストラップは、妙な主張をせずに時計全体の調和を保つ役割をしている。ちなみに、非常に贅沢なことに、このストラップは現状本機だけに採用されている。フランスで最も多く時計を製造する同社だからこそ、数々のオプションのなかからこのモデルに最適な組み合わせを商品化できたのだ。
フランス人のこだわりが生きる黒い時計は、やはりトーンのまとまり方が秀逸だ。主張をしすぎずにヨーロピアンな雰囲気を纏えるニューポートならば、和を尊ぶ日本であっても密かに個性を表現できることだろう。


ニューポート クロノグラフ クォーツ
Ref.36656/GN33 14万5000円(税抜)
直径42.5mm、10気圧防水、クォーツ
昨年までの定番モデルには通常の型押しレザーが使われていたが、2017年新作でマットレザーが新登場


プロフィール

白州太朗
文筆家。時計ジャーナリスト。腕時計専門誌の編集者出身で、バーゼルワールドやSIHHをはじめ、スイス、フランス、ドイツ、イタリアといった高級腕時計の故郷で取材を重ねる。腕時計とシャツ、アクセサリーとの合わせを追求する袖元研究家でもある。好物はしらす丼。