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2018年9月11日 / 文筆家・時計ジャーナリスト 白州太朗
ミッシェル・エルブランは71年目を迎える超老舗!
そんな彼らも若返りを図って生まれ変わる模様です

フランスの超老舗ブランドである、ミッシェル・エルブラン(以下MH)が71年目を迎えた。
二ューポートのモダナイズをメインテーマにコレクションを再編し、より現代的なブランドへと生まれ変わろうとしている。

“左上から時計周りに、セドリック氏、マキシム氏、マチュー氏、ベンジャミン氏”

ミッシェル・エルブランは3代目社長・ピエール-ミッシェル氏を中心としたブランドであり70周年の昨年はコネクテッドウオッチにトライするなど、ブランドの未来を見据えた年だった。
その彼らが今年、さらに大きな変革を迎えた。これまでのデザイナーとして活躍していたマチュー、セールスを担当するベンジャミン、他企業から2年前に参画したセドリック、マーケティングを担当するマキシムら、30〜40代の若手を中心とした経営体制となった。独立体制をとるブランドが減るいまの時計界にあって、いぜんとしてその道をつらぬき、MHらしい時計作りを続けることの証明とも言える。ユーザーにとっては、急に親しんだ時計の価格が跳ね上がってしまうような、不利益を被る心配がないというわけだ。

再編されたニューポートコレクションで、特に注目すべきはブラックPVDケースに身を包んだクロノグラフと3針の限定モデルである。それぞれ4o万円程度(クロノグラフ)、20万円程度(3針)で展開されているが、これはスイスブランドであれば簡単に倍のプライスとなりうる出来栄えだ。クロノグラフの方は、有力なムーブメントメーカーであるセリタと共同開発しMHがローンチカスタマーとして世に出す特別な機械を心臓部に宿す。ケースのブラックPVDは品が良く、ツヤ感がありながらいやらしくない黒はなんともフランス的で洒落ているのだ。これらは限定である故、すでに手に入らない恐れもあるが、それ以外の新コレクションからMHの本気度を感じた。

デザイナーのマチューが、それぞれのコレクションについてそっと明かしてくれた。
「アクティブなラインとして、スターティングプライスからSSブレスを用意しました。ヨーロッパ、特にフランスで求められるSSブレスのニーズにしっかり応えていくつもりです。また、これらのアクティブな時計は若いユーザーのニーズに確実に応えていく役割があります。彼らが手に取りやすいようダイバーズのトロフィーなどの新コレクションを10万円台のバリューな価格帯に追加しました」
 一方で、フラッグシップのニューポートを含むクラシカルラインは、より高級なシリーズへと位置付けるという。
「時計は今、レトロデザインがトレンドです。我々はそのニーズにもしっかり応えます。ニューポートに、よりクラシカルなロワイヤルシリーズ(日本未展開)を加えたのがその一例です。それでいて、ブランドのアイデンティティといえるヘリテージを用いた時計のラインナップも欠かしません。70年以上歴史を持つMHだからこそできる、昨年のインスピレーションのようなタイムレスな時計はブランドの核と考えているからです」

ニューポートコレクションはラバーバンドの質感も上々な、風格あるモダンウオッチ

ニューポートオートマティック

Ref.1668/G14CB
19万8000円+tax
500本限定

シリーズ30周年を祝したフラッグシップコレクションの3針モデル。カーボンダイアルとブラックPVD加工でスタイリッシュになったSSケースでモダンに仕上げた。
ブランドロゴが刻印されるラバーベルトは着け心地も抜群だ。
自動巻き。41㎜径。10気圧防水

プロフィール

白州太朗
文筆家。時計ジャーナリスト。腕時計専門誌の編集者出身で、バーゼルワールドやSIHHをはじめ、スイス、フランス、ドイツ、イタリアといった高級腕時計の故郷で取材を重ねる。腕時計とシャツ、アクセサリーとの合わせを追求する袖元研究家でもある。好物はしらす丼。